世界の果てをつれて歩く

日常と幻想(笑)の間をうろうろしているどうしようもない人のブログ

100万円があるというストーリーを考えたら

今週のお題 ここに100万円があります

100万円なあ。私なら何に使うだろうか。結局何かあった時のために貯金してしまうかな。

色々考えてみたけれど、そもそも100万円が理由なく手元にいきなり舞い込んでくるという光景が想像できないのです。それでもいきなり100万円がもらえることになったら‥‥と考えてみたら、とても不気味なストーリーになりました。せっかくなのでよかったら読んでください。

あと、書いてみて気づいたことですが、私はお金が急に増えるということが「怖い」と感じるのかもしれないと思いました。こりゃお金が貯まらぬはずやなと思いました。






いただけるということですか?

ちょ、ちょっと、どこ行くんですか‥‥?


その人は「使っていいよ」と言うと100万円の札束を残していった。

夕方、公園のベンチに座って今日の自分へのご褒美のジュースを飲んでいたら、変な人が近寄ってきた。

「ああああ、いやだいやだ。あなたみたいな人にあげるのがいいみたいだねえ。」

少しニヤニヤとしたかんじのその話し方に、なんだか馬鹿にされたような気がしてムッとした。が、その手にはなんと‥‥札束‥‥?!

その人は「はいどうぞ」という。

いただけるということですか?

「あげますよ、あなたにね。」

なんだか恐ろしくなってきていた私は、ここから離れた方がいいと思い始めていた。目の前にいる突拍子もないことを言う人から離れようと体を動かそうとした瞬間、その変な人は相変わらずニヤニヤした顔で「はい、使っていいよ」と言うと私の手に札束を押し付けて、ものすごい速さで公園の外まで走っていってしまった。

私は呆然として、しばらく動けなかった。さっきびっくりしたせいで、飲んでいた炭酸飲料の缶は倒れて砂の上にぶちまけられている。向こうの遊具から子供が遊んでいる声がする。手の中には札束。この状況いったいどういう状況なんだ。ありえない。

混乱した頭で、私はさっきの会話を何度も頭で再生していた。

「あげます」「あなたに」

たしかにあの人はそう言った。使っていいと。私に。たしかにそう言ったよね。

頭がクラクラしてきた。公園の入り口の方から、小学生らしき3人が自転車でこっちに向かって走ってくるのが見える。私は札束をリュックに押し込んで、その場を離れた。


家に帰るまで変な汗が止まらなかった。電車のクーラーは寒いくらいなのに汗が止まらないのだ。今さっき自分の身に起こったことは現実なのだろうか?私、疲れてるんだろうか。

そういえば私は、半年前に意地悪で面倒な人がいる職場から逃げたのだった。今のパート先に来てからは問題なく働けていると思ってたけど、疲れが今頃出てきたか。きっとそうだ。

帰宅したら、いつもはリュックに入った1日分の汗を吸い込んだ制服と弁当箱を出すのだけど、今日はシャワーを浴びて、スパゲッティを茹でて市販のたらこソースをかけたものを食べながらバラエティ番組を見ていた。そうしているうちにちょっとリラックスしてきて、今日の面倒な記憶に向き合う気力が出てきたような気がした。

リュックを開けると制服のの黄色いポロシャツとタオルが出てきた。そしてその下にはお弁当箱と水筒。なーんだ札束なんてないじゃん。やっぱり妄想がすぎただけなのだ。さっさと食器と弁当箱を片付けてさっさと寝よう。

明日のために、リュックに明日用のポロシャツを入れようと持ち上げた時嫌な感じがした。

リュックをひっくり返すとバサッと札束が床に落ちた。


札束はちょうど100万円あった。

あなたにあげるとたしかに言われたけれど、このお金を自由に使おうとは思えなかった。札束をむき出しで置いておくのは物騒だと思ったから、流し台の下の戸棚のお米の入った密閉容器の裏になんとなく置いておいた。

今朝は色々と考えながら職場への道を歩く。昨日の公園のそばまできて、そういえば昨日札束を渡してきた人の顔を、どうしても思い出せないことに気づいた。ニヤニヤとしていたことは覚えているのに。男だったか女だったかさえも思い出せなかった。昨日のことはたしかにあったことだったのか。昨日札束を数えていたくせに、そんな考えがまた浮かんでくる。

職場は大きな倉庫だ。ネット通販で注文された商品を注文通りピッキングするのが仕事だ。

昼休み、一人でスタッフルームでご飯を食べていると先輩二人がおしゃべりしながら入ってきた。「お疲れー」「お疲れ様です」とだけ挨拶を交わして、私はまた1人の食事に戻る。私が無口なことを彼女たちはわかっているから。

弁当を食べ終えてまだ時間があったから、いつものように本を読み始めようとしたけど、今日はなんだか集中できない。なんでだろう。

隣から先輩たちの会話が聞こえる。

「老後に1人2000万円なんて全然足りないわよ」「誰か100万円、ぽんっとくれないかな」

私はなんだかソワソワしてきてしまって、スタッフルームから出た。


帰り道、やっぱり今日も「自分へのご褒美」が必要な気がしたのでジュースを持っていつもの公園に向かう。いつもの気晴らしでもあるけど今日はあの「100万円」の人に会えるんじゃないかと思ったからでもある。

公園にはいると、いきなりあの人だと思う人がいた。背の高い女性だ。私は思わず駆け寄って話しかけてしまった。

あの、昨日のあれ、なんで私にくれたんですか?どういうことでああなったのでしょうか?!

だけどその女の人は怪訝そうな顔で、私を睨んで「何でしょうか、以前にお会いしたことありましたっけ?」という。よくよく顔を見てみたら知らない人だ。ごめんなさい人違いでした。と言って公園を出た。


家に帰るといつもよりどっと疲れたような気がした。いつものようにポロシャツと弁当箱を片付けて夕飯を作り始める。そういえば冷凍してたご飯がもうなかったな。流し下の米の密閉容器を取り出すと、そこには100万円はなかった。

戸棚の中のものを全部出したけれど、やっぱり見つからなかった。泥棒か?とか一瞬思ったけど、帰った時たしかに玄関の扉とベランダの窓はしっかり閉まっていた。

なんなんだ、どういうことだと思って、しばらく何もやる気が起きずゴロゴロしていたら、もともとなかったものだし、と頭に浮かんできて、するとなんだかちょっと気持ちが軽くなった気がした。

これは本当に気のせいかもしれないけど、密閉容器の中のお米の量が最近あまり減っていないように思うのは気のせいかな。



ここまで長い文章を読んでくださってありがとうございました(о´∀`о)